日本の排出量がわかったところで、本節では、排出削減の目標について見ていきます。
カーボンニュートラルの表明
2020年10月26日、第203回臨時国会において、「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」こと
が宣言されました。当時の菅義偉首相によって、日本が2050年ネットゼロを目指すことが正式に表明されたのです。
また、2021年4月に開かれた地球温暖化対策推進本部において、「2030年度に2013年度比46%減、さらに、50%の高みに向けて挑戦」が表明されました。これは、2050年に向けたマイルストーンであり、いかに大きな数値を目指せるかが問われました。
日本の温室効果ガス排出量の過去推移と目標値
カーボンニュートラル表明のドタバタ
日本がカーボンニュートラルを表明したタイミングは「ギリギリだった」と言われています。当時、先進国でネットゼロ宣言をしていなかったのは、日本とアメリカだけでした。日本としては、パリ協定へのコミットメントを世界に発信していくために、早急に表明しなければならない状態でした。そして、ぎりぎりアメリカより先に表明することができたのです。
一方で、2030年の排出削減量は、アメリカの50%より少ない46%となっています。ただ、これも日本としてはかなり野心的な目標で、削減できる分野の数値を積み上げて、積み上げて、積み上げた結果として表明したのです。
こうして決まった脱炭素目標に従って、2030年度と2050年目標を日本のNDCに盛り込み、世界に約束しました。
法整備や閣議決定で目標を明確化
2021年6月、改正地球温暖化対策推進法が公布されました。これは、「2050年までの脱炭素社会の実現」を法定化したものです。
また、同時期に、地域脱炭素ロードマップを策定し、地域の脱炭素化に向けて今後5年間に対策を集中実施する旨を決定しています。
さらに、2021年10月、「地球温暖化対策計画」や「政府実行計画」、「パリ協定に基づく長期戦略」を閣議決定し、2050年カーボンニュートラル、新たな2030年度目標とその実現に向けた施策等を位置づけました。
温室効果ガス排出量の削減目標の内訳
2030年度、排出量46%(2013年度比)削減の中身を見ていきましょう。
2030年度における温室効果ガスの排出削減・吸収の量に関する温室効果ガス別、その他の区分ごとの削減・吸収目標は以下の通りです。
温室効果ガス別その他の区分ごとの目標・目安
エネルギー起源CO2排出量削減による温室効果ガス排出量削減幅が最大となっています。
また、温室効果ガスとして排出してしまったものを回収していくアプローチである「吸収源の増加」の効果も期待されています。
エネルギー起源CO2排出量の削減目標の内訳
次に、最も効果が期待されているエネルギー起源CO2排出の削減内訳を見ていきましょう。
部門別 エネルギー起源CO2排出量
産業分野からの削減量見込みが最大です。
一方で削減割合に注目すると家庭分野が最も改善幅が大きいです。
エネルギー需給の変化目標
エネルギー需要は2013年度比で合計約0.8億kL削減
エネルギー需要の変化
経済成長率、人口推計等を踏まえると、約0.62億kL(6,200万kL)の省エネルギーが実施される事を見込まれています。
一次エネルギー供給は再生可能エネルギー比率を22~23%程度まで向上。
一次エネルギー供給の推移
電力需給の変化目標
2013年度比で約2300億kWhの省電力。再エネ発電の割合を36~38%まで増加。原子力発電の割合を20~22%まで増加。
別電力需要量と部門別電力供給量の推移
本節では、日本の大きな脱炭素目標について学びました。
日本は、多くの諸外国と足並みをそろえた排出削減の目標を表明しています。しかし、目標を立てただけでなく、実際に達成することが重要です。
次節では、日本が目標達成のために取り組むことを解説します。