4-1. 金融市場の動き【カーボンニュートラル教材】

脱炭素に向けて、金融業界が何をしているかをお話します。

ESG投資とは

金融市場で今ホットなのは、ESG投資というものです。

ESGとは、それぞれ、環境Environment)・社会Social)・ガバナンスGovernance)の頭文字をとったもので、企業経営のサステナビリティを評価するという概念です。

ESG投資とは、従来の財務情報に加えて、E、S、Gの3要素を考慮した投資のことです。

今までは投資家達は企業の財務情報を元に投資するかどうかを決めていましたが、

企業の社会への責任が重視されようになる中で、財務情報だけでは企業の価値を評価しきれなくなっているのです。

ESG投資の盛り上がり

ESG投資市場は2020年の段階で、世界で35.3兆ドルにまで急成長しています。日本においても2.87兆ドル(世界全体の約8%に相当)にまで急成長しました。

ESG投資は、特に、大きな資産を運用する投資家である「機関投資家」を中心に普及しています。

世界最大の機関投資家は、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)と言われています。

運用額は、なんと196.6兆円(2022年度3月末時点, 参考)です。だいたいイタリアのGDP程度というと、いかに大きいかがわかります。

そんなGPIFは、国連責任投資原則(PRI)に署名しており、投資にESGの視点を組み入れることを明確にしています。つまり196.6兆円をESGを考慮して運用しているといえるのです。

そのうちESG指数に連動する運用資産額は約12.1兆円、グリーンボンド等への投資額は約1.6兆円です。(参考

世界最大の機関投資家がいかに本腰をいれてESG投資に取り組んでいるかがわかるでしょう。

ESG債について

ESG債とは、企業や地方自治体等が、ESGプロジェクトに必要な資金を調達するために発行する債券のことです。

上の見出しでGPIFが約1.6兆円投資しているとしてご紹介したグリーンボンドもESG債の一種です。

ESG債は、一般の債権と同じように発行されますが、大きく異なる点があります。それは、調達した資金の使い道がESGプロジェクトに限定されることです。通常の債権であれば、調達資金の使途は限定されませんが、ESG債の場合は、予め使途を決めてから発行するため、サステナビリティに貢献するものにのみ使えます。

近年ではESG債を発行することでESG投資を受けようとする動きが活発化しています。

以下の図を見ていただくとわかるように、ESG債の発行額は年々年々上がっており、GreenボンドとSocialボンドの2つで大部分を占めています。

JPX「ESG債情報プラットフォーム」よりE4G作成

このようにESGに関連するプロジェクトを支援する動きが加速しているのです。

本節では金融市場の脱炭素化に向けた動きについてご説明しました。

次節では消費者の動きに焦点をあてます。