2-2. 国際会議COP(Conference of the Parties)とは?【カーボンニュートラル教材】

脱炭素化推進のための会合「COP」

前節では、世界の温室効果ガス排出が増えている現状について学びました。

本節では、人類が国家群として脱炭素という難しい課題をいかに解決しようとしているのかについて学んでいきましょう。世界は、温室効果ガスの排出を削減するために定期的に国家間での議論の場を設けています。

タイトルにも含まれていますが、本節の中で最も重要なキーワードは「COP」です。

脱炭素の文脈でよく耳にするCOP(締約国会議)とは?

COPというアルファベット3文字の単語をみなさんも気候変動問題に関するニュースなどで聞いたことがあるのではないでしょうか。

COP26のロゴ(出典:COP26ウェブサイト)

つい最近もCOP26がイギリスのグラスゴーで開催されました。
COPとは、「Conference of the Parties」の略で、日本語では「締約国会議」と訳します。

名前からわかるように、実はCOPというのは、単に会議の総称で、気候変動問題を扱う会議だけを指すものではないのです。

COPは、条約を結んだ国々による会議で、さまざまな「締約国会議」が存在します。
ある国際条約が締結されると、その条約に関する内容の会議がたくさん開かれます。なので、いろいろな条約のためのCOPが開催されているのです。

ただ、その中でもよく「COP」としてテレビなどで報道されているのが、国連気候変動枠組条約(UNFCCC: United Nations Framework Convention on Climate Change)という条約に関する会議です。最近のCOP26は、国連気候変動枠組み条約の26回目の会議に相当するのです。

ニュースでCOPという単語を聞いた場合には、気候変動に関するCOPのことを指します。

COP(締約国会議)で世界が合意することの難しさ

皆さんにわかっていただきたいのは、普通、COPでは各国の利害が対立するので、成果を取りまとめるのが大変だということです。

利害対立のわかりやすい例が、最新のCOP26でもありました。
イギリスは、成果文書に石炭火力発電の「段階的廃止」を入れようとしていましたが、インドが土壇場で「廃止は困るから、段階的削減にしてくれ」と言うわけです。

会議の最終版で言うわけなので、このまま決裂すれば、成果はなくなります。イギリスはしぶしぶこれを飲むわけですが、議長のアロック・シャルマさんも声を詰まらせながら謝罪していたのが、とても印象的でした。

是非以下のBBCの動画(所要時間1分32秒)をご覧下さい。(音声は英語ですが、日本語字幕がついています。)

気候変動対策を目的とするCOP(締約国会議)の時系列整理

COPについての理解を深めるために、COPを時系列的に整理してみましょう。

COP(締結国会議)の歴史と成果

これまでに26回COP(締結国会議)は開催されています。重要な回をピックアップすると以下の図のようになります。この4つは頭の片隅に置いておきましょう。

E4G作成

1992年 地球サミット「環境と開発に関する国連会議」(ブラジルのリオデジャネイロにて開催)

  • 1992年6月2日〜1992年6月14日
  • 約180カ国が参加
  • 国連気候変動枠組条約(UNFCCC: United Nations Framework Convention on Climate Change)が採択
  • 温室効果ガスの大気濃度の安定化が目的
  • このサミットの後の1995年より、1,2年に1度のペースでCOPが開催されるようになる

参考:環境省「環境白書」

1997年 COP3「地球温暖化防止京都会議」(日本の京都にて開催)

  • 1997年12月1日〜1997年12月10日
  • 有名な京都議定書が採択
  • 温室効果ガス6種が対象(CO2、CH4、N2O、HFC、PFC、SF6)
  • 目標:先進国全体で2008年〜2012年までに排出量5%の削減(1990年比)
  • 日本は6%削減、アメリカは7%削減、EUは8%削減を掲げた
  • 法的義務は先進国のみ

参考:総務省「京都議定書の概要」

2015年 COP21「パリ会議」(フランスのパリにて開催)

  • 2015年11月30日~2015年12月13日
  • パリ協定が採択(2016年発効)
  • 京都議定書に代わる2020年以降の脱炭素化の枠組み
  • 目標:2℃の長期目標。1.5℃に抑える努力の追求
  • 先進国のみならず、途上国、新興国にも脱炭素化の取り組みを求めた

参考:外務省「2020年以降の枠組み:パリ協定」

2021年 COP26「グラスゴー会議」(イギリスのグラスゴーにて開催)

  • 2021年10月31日〜2021年11月13日
  • パリ協定の実施指針が合意に至り、ルールブックが完成
  • パリ協定6条の市場メカニズムが議論の中心
  • NDCの報告or更新
  • 政府承認に基づく二重計上防止策も盛り込まれた

参考:資源エネルギー庁「あらためて振り返る、「COP26」(前編)~「COP」ってそもそもどんな会議?」

COP21のパリ協定について

特に重要なCOP21について深堀りします。

世界には、190以上の国と地域があるので、成果を取りまとめるのは大変です。
しかし2015年にパリで開かれたCOP21は、大きな成果を挙げました。

それが、パリ協定なのです。

Source:COP21ウェブサイト
パリ協定の内容

気候変動を抑制するため、気温上昇を産業革命前と比べて気温上昇を2℃以内に保ち、1.5℃におさめる努力をすると約束するもの

パリ協定は上のような内容です。
2020年以降の脱炭素の取組みを文書として残せた意義は大きいのです。

次のCOP(COP27)について

次のCOP27は2022年11月6日〜11月18日にエジプトのシャルムエルシェイクにおいて開催予定です。

Source: COP27公式サイト

本節では、脱炭素に向けて国際的に議論をする場であるCOPについて説明しました。
各国の利害が対立する中で、人類共通の課題である気候変動に対して、足並みをそろえられるかが大きなポイントになります。

次節では、COPで話し合われたことをもとに、各国がどのような排出量削減目標を立てているのかを解説します。